認知脳科学研究
~人のこころの仕組みを探る~

ヒトの心とは何でしょうか。心の座が脳であるとすれば、それはどのように実現されているのでしょうか。心と脳は複雑な環境に適応しながら、進化・発達してきました。ヒトの脳は社会・文化・経済を作り、我々の生きる環境そのものを大きく変えてしまいました。それでも依然、ヒトの脳の発達は系統発生をたどり、間違いなく身体とつながっています。心と脳は我々の身体と世界との間をどのように取り持っているのでしょうか。なぜそこに個人差があり、時にうまく働かないことがあるのでしょうか。そしてヒトの脳はこれからどう進化し、我々の心と世界をどう変えてゆくのでしょうか。

脳は、外界や身体内部からの入力情報をセンサーから獲得・統合し、記憶と照合して状況を認知し、対応した行動を運動として出力します。この間の情報処理は多数の心の部品(機能モジュール)の組み合わせで実現されています。我々はそれら心の部品とその組み合わせについて、fMRI等の脳機能イメージングを中心に、様々な心理測定方法を併用して研究しています。現実世界の複雑な状況の理解・記憶や、他人の心の共感・推論、それを基にした判断・行動といった、人間ならではの高度な心の働きから、感情や身体感覚といった動物として生存に基本的な情報処理まで、幅広いテーマを研究対象としています。


【図注】

視線の動きを検出する能力はヒトでは乳児期から観察され、他者の心情の推測能力(「心の理論」)の発達の一つのカギとする仮説がある。視線の動き刺激(a)と物語理解課題(b)を用いたfMRI実験の結果(c)、前者に対する右中側頭回後部(青△)の脳反応と、物語理解中の他者の心情理解に関わる側頭極(緑△)及び前頭前野吻内側(紫△)の脳反応が被験者間で共変することがわかり、この仮説の証拠が得られた。(Sugiura et al., Soc Cogn Affect Neurosci, 2013, doi: 10.1093/scan/nst119)